【2021】次世代サッカー解析に関する研究

【2021】次世代サッカー解析に関する研究

Publish Date
December 20, 2021
Tags
Sports日本語

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Takeaways

  • 画像認識やシミュレーションを活用するのが次世代のサッカー解析
  • AIは学習するにつれ人間に近いサッカーをプレーするようになる(かも?)
目次

導入

このブログ記事は【スポーツアナリティクス Advent Calendar 2021】の22日目の投稿として書かれたものです。

自己紹介

まずは自己紹介から、

現在(2021年12月)は筑波大学大学院で主にスポーツ×AIの研究をしているスコットアトムと申します。研究分野は、スポーツ科学・コンピュータビジョン・エージェントベースシミュレーションなどです。学類生の時は筑波大学でデータアナリストをやっていました。 詳しくは以下のページをご覧ください。

💁‍♂️
"What I do" in 30s, 5mins, and 10mins

スライドについて

本記事で使っているスライドの中に自分が所属している研究室(産総研・筑波大)と共同で研究を進めている研究室(名古屋大)に関する外部公開OKの情報をいくつか載せているものがります。それらについて興味を持った方は以下のサイトを参考にして頂けると幸いです!

筑波大学連携大学院(大西研究室)

画像認識による人の流れの追跡や シミュレーションによる人の流れの予測の 結果を使って新しいサービスを作り出すことを目的としています. 人の流れの認識,追跡,動作認識のような画像認識や 機械学習を効率的に自動化する AutoML, マルチエージェントシミュレーション, また,計測とシミュレーションの融合であるデータ同化(data assimilation) のような基礎技術から 商業施設でのマーケティング分析,駅などの公共空間での安心・安全管理, 大規模イベントなどでの誘導支援,介護施設での徘徊検出, ミーティングスペースでのコラボレーション計測などの 応用技術までが研究のスコープです. これまでに様々な環境にて取得した大規模な人流ビッグデータがあります. これらのデータを使って世の中の役に立つ研究をしましょう. 詳しくは右のフライヤーをご覧ください. フライヤー 2017年度にできた新しい研究室です.一緒に研究室を盛り上げてくれる方を募集中です! 以下の業績は主要なものを2件まで. 博士4年 鷹見 竣希 大規模情報処理による人流解析の効率化・高速化[1] S. Takami, M. Onishi, K. Iwata, N. Ito, Y. Murase, T. Uchitane, "An Environment for Combinatorial Experiments in a Multi-agent Simulation for Disaster Response," Principles and Practice of Multi-Agent Systems (PRIMA), 2018.

筑波大学連携大学院(大西研究室)

次世代のサッカー解析到来!

ブラッド・ピット主演のマネーボールはご存知でしょうか?

スポーツにおける数値的な解析を用いたチームの改善には多くの成功例があり、2000年初頭から多くのプロスポーツチームでは、専門的なアナリストを採用することが増えています。

スポーツにおける数値的な解析の成功例、左から「
スポーツにおける数値的な解析の成功例、左から「Basketball on Paper」「Moneyball」「The Numbers Game」。

マネーボールでは野球が題材になっていますが、数年前からサッカーでも大量のデータを取得することが可能となっています。そのため大量のデータで学習した機械学習モデルの活用も盛んになってきており、2019年の時点で放送映像から位置座標に加え、選手の姿勢や向きの情報を画像認識で取得する取り組みも目にしました。

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ビッグクラブも興味津々

最近まではプロのスポーツチームが複雑でブラックボックスっぽい機械学習に興味を示していないように見えました。しかし、超ビッグクラブらが独自のスポーツ研究機関を持ったり、IT系大企業と共にタッグを組んでイベントを開催したりと、明らかに興味を示しています。

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次世代サッカー解析における注目領域

実用的な知見を得るまで

サッカーに関するデータを取得してから現場で活用できる知見を得るまでは、

「データの管理」、「重要なデータの抽出」、「指標の作成とデータの分析」

そして最後にレポート化などして、やっと「実用的な知見」にたどり着く長い道のりがあります。

練習におけるGPSデータの活用を例にとって考えると分かりやすいかもしれません。下に一連の流れをまとめたので見ていきましょう。

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  1. データの管理
  2. 選手にGPS装置をつけて練習をさせたあとに装置から、クラウド上のデータベースに生データを保存

  3. データの抽出 練習メニューのスケジュール・練習の映像を見てに生データを練習ごとに時間を区切って、分析したい時間のデータだけを抽出
  4. データ分析・指標の作成 コーチの経験や論文で発表された指標(AC比やBodyLoad)を計算したり、グラフを作成
  5. 実用的な知見 ③での分析結果をレポートなどにまとめて監督に報告・相談したり、選手にプレゼン

一般的には上記のような流れになるんですかね、筑波やってたときもこんな感じでした。ちなみに今の筑波は抽出をある程度飛ばして直接レポート作ったりしてると聞きました。

デバイスと連携したアプリやウェブサイトが成熟し、UIが良くなることでデータの管理や決まったグラフ・指標の生成は段々と自動化されてきます。この辺りは画像認識やシミュレーションなど、いわゆるAI的な技術がなくても分析のフローが改善していくと考えています。

では、どういったところでAIが活用されるのだろうかと疑問に思うかもしれません。

僕はAIを用いた次世代サッカー解析は②と③の「分析の質」を劇的にパワーアップさせるポテンシャルがあると信じて取り組んでいます。画像認識を用いて選手を関節レベルまで追跡して疲労度を計算したり、100万回シミュレーションしてベストな戦術を選択したり、人間には到底できないレベルの知見を出してくれたら...🤩

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このセクションでは、そんなAI技術のなかでも自分が着目して研究を進めている3つの注目領域(位置座標推定・審判補助・戦術シミュレーション)について紹介します!

選手・ボールの位置推定と追跡

まずは映像から直接選手とボールの位置を推定し、追跡する技術の研究です。選手とボールの位置を正確に追跡することがで、GPSセンサーが不要になったり、相手チームの情報を取ることができたり、位置を考慮した発展的な指標を扱うことができるようになります。

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トラッキング技術はスポーツ関係なく研究が活発に行われている分野で、2016年頃からアルゴリズムの改良がさらに加速するようになりました(詳しくはこちら👇)。

Multiple-object tracking (MOT) アルゴリズム研究の歴史 ~現代 MOT の基礎となった SORT/DeepSORT の紹介~ - ACES エンジニアブログ

こんにちは、株式会社 ACES (以下 ACES) の檜口です。普段は アルゴリズムエンジニアとして Deep Learning (以下 deep) を中心とする研究開発業務に従事しています。 ACES ではリアルな現場の画像認識を行う機会が多いです。この時さまざまな アルゴリズムを利用していますが、その中でもト ラッキング技術は多くの アルゴリズムの基礎となるモジュールとして重要です。例えば、複数の人物がいるような状況で、ある人物に着目してなんらかの分析を行いたいときなどにはト ラッキング 技術が必須になってきます。 ト ラッキング技術は研究領域では multiple-object tracking ( MOT) と呼ばれており、動画とオブジェクトのクラスが与えられたときに、動画中の対象のオブジェクトの位置を特定しつつ、個別のオブジェクトがどのように移動したかを追跡するタスクです。Machine learning の文脈でより正確に記述するならば MOT は動画中のオブジェクト位置を bbox で検出しつつ (物体検出、object detection) 、同一のオブジェクトが動画中で検出された時には、それらが同一の ID を持つようにする (フレーム間でのオブジェクトの紐付け、association) というタスクになっています。 MOT は deep model を使った物体検出モデルがパフォーマンスを伸ばすにしたがって、物体検出モデルの出力を利用してト ラッキングを行う tracking-by-detection という パラダイムで大きく性能を向上させました。Tracking-by-detection 方式を採用した MOT アルゴリズム

Multiple-object tracking (MOT) アルゴリズム研究の歴史 ~現代 MOT の基礎となった SORT/DeepSORT の紹介~ - ACES エンジニアブログ

自分の研究では、上記の記事の中でも取り上げている2016年に登場した「 物体検出を deep で置き換え、association はカルマンフィルタを基にした affinity matrix を介して行う」Tracking-by-detection 方式を採用したトラッキング手法を取り入れています。

さらに、サッカーは従来のトラッキングとは設定が微妙に異なるので、サッカー特有の要素を考慮することで精度の向上を実現することができました。

例えば、

  • 追跡する人数がほぼ決まっている(ほぼ=10試合に1試合程度はレッドカードが出る)こと
  • チームの色がはっきりしていること
  • 非線形な動きが多いこと

など、うまくこれらの特徴をアルゴリズムに組み込みました(詳細はいずれ出す論文を楽しみに!)。

映像から位置情報を推定し、選手をトラッキングすることで、従来のデータよりも何倍も粒度が細かい情報を手にすることができました。それでも現時点での精度はまだまだ改善の余地があるので、引き続き研究に取り組んでいます。

審判補助

(誤審があっても)審判が人間なのはサッカーの醍醐味の一つである、という人はかなり多いと思います。父もそう言っててちゃんとケンカしてことがあります(笑)。

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ですが、選手を経験した自分としては誤審によって勝敗が左右されることはあってはならないと感じているため、審判の自動化に関する研究も進めています。

ここの内容に関しては共同研究者(@ikuma_uchida18 )が先日記事を書いているので深入りはしません!

(上記の記事にて、精度の改善点として、カメラの台数と姿勢推定技術の導入をあげてますが、多分トラッキングの精度(選手&ボール)を向上することのほうが重要な...)

戦術シミュレーション

計算機が安くなり、サッカーゲームのようなシミュレーション環境を用いて様々な状況を作り出して分析を行う「ゲームシミュレーション」や大量のデータからサッカーの動きを学習した「ゴースト」による分析など色々出てきました。

「ゴースト」を用いた研究は特に面白く、ある攻撃シーンにおいて

「もしチームAではなく、チームBが守備していたらチームBはどう動いていたか」

とシナリオをを作り、それを使って実験・観測することができます。

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シミュレーションとは現実は似ているのか?

僕がシミュレーションの研究を始めた当初はAlphaGo Zeroが出た頃で、チェスや囲碁のAI(自己対戦学習をさせたモデル)が無双していました。

「AIにサッカーをやらせたらどうプレーするのだろうか」

「無双するサッカーAIを分析してみたい」

という興味があり、リリースされたばかりのGoogle Research Footballというシミュレーション環境を触ってました。

実際にやってみると、AI同士を戦わせて学習させる自己対戦型の学習でサッカーをやらせることは非常に難しかったです。今(2021年現在)でもGoogle Research Footballを使って11対11の試合をちゃんとプレーさせることは誰も成功できていません。目標を高く設定しすぎました。

なので、まずはウイイレのように同時に一人のみを操る機能を持たせたシンプルなAIを学習させて、それが現実の人間のサッカーに近いかどうか、とレベルを落とした研究目標に再設定しました。

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シミュレーションを活用する際に、シミュレーションがどれだけ現実と近いかを考える必要があります。もちろんシミュレーションと現実が大きく乖離していれば、いくらシミュレーションを分析しても意味があまりありません。

そのため、シンプルなAIでも、学習するに連れ、現実の人間のサッカーに似てるかを調査することは割と有意義なのです。

結果的に、AIを学習させればある程度人間っぽいサッカーをするようになり、Google Research Football 環境が戦術分析の実験台ともなりえるということが研究を通して分かりました。

研究ちっくにまとめると、研究の内容は以下のようになります。

  • 様々な訓練過程におけるサッカーをするRLエージェント(Kurach et al., 2019)と現実のサッカー選手の特性を初めて比較し、サッカー解析の実用的なアプローチとしてのシミュレーションを検証した。
  • その結果、競争力の高いRLエージェントは、競争力の低いRLエージェントと比較して、現実世界のサッカー選手とパス戦略がより類似し、バランスが取れていることが分かった。
  • また、RLエージェントのサッカー戦略が、エージェントの競争力の上昇に伴い、どのように進化していくかを分析した。その結果、多くの統計情報とソーシャルネットワークの間に強い相関があることがわかった。

(競争力=複数学習した他のAIと比べた強さ)

(2022年はいよいよ11対11の設定でやってみたいです)

最後に

「次世代サッカー解析」って言うワードを作って、分析に関する新しい技術について触れてきました。近い将来に向けて自分が感じているワクワクを少しでも分かち合うことができたら嬉しいです。

最後まで読んでくださりありがとうございます!

今年も研究・分析頑張ります🥊

👋

Thanks for reading!

Hi, I'm currently researching individual & group human motion at the University of Tsukuba🤸 My interests intersect sports science, computer vision and agent based simulations. See the pages below for more information!

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